楽屋（詩人の部屋�Y）

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詩：ふさこ

[　おもいで　]


その伯父さんは優しい人だった。
わたしがう〜んと小さい頃
わたしを養女にほしいとお願いしたそうだ。
その伯父さんには子どもがいなかったから。

伯父さんは、クリスマスに大きな板チョコを送ってくれた。
サンタクロースやトナカイや外国の冬景色が
彫刻のようにほどこされたチョコだった。
わたしはストーブにチョコをかざして、少しずつ溶かしながら食べた。
冬中、食べた。

しばらくして伯父さんは病気になった。
伯父さんの病気は癌だった。
伯父さんは死んだ。

お葬式に行った。
そんなに悲しくなかった。
よく分らなかったのかもしれない。

それから、何年かが過ぎた。

押入れを整理していたら、伯父さんからのカードが見つかった。
遊びに来て下さいね　と書いてあった。
声が 　　聞こえたような気がした。
遊びに来て下さいね　って、もういないじゃないか。
わたしは、はじめて伯父さんが本当に わたしを可愛がってくれてたんだと気がついた。
わたしは、はじめて泣いた。
声をあげて泣いた。
伯父さんと
優しかった伯父さんと仲良くできる
チャンスを
すべてのチャンスをわたしは失っていた。

その、おだやかな優しさに 心からお礼を言いたくても
伯父さんは
　　　　　
　　　　　　　　　　　　　もう
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　いない。